even if
半年分のキスを取り戻すかのように、私たちはキスをした。

もうここが学校の保健室だということも忘れて。


渋谷くんは、私の頬を両手で挟んで、首を傾けると、今までとは違う官能的なキスをしてきた。

溺れるように深く、求めるように激しく、味わうように甘いキス。


何度も、唇を離しては、どちらからともなく、また重ねた。唇を離すのが、嫌だった。


『…ななちゃん…』

少しだけ唇を離して、渋谷くんが私の名を呼ぶ。

私も渋谷くん、と言いたいのに、すぐに唇をふさがれて、私はうっとりと目を閉じる。


この服いらない。
私は思う。

渋谷くんにふれたい。
これ、邪魔だわ。


ピンクの花がついたブレザーも
パリッとした白いシャツも。
その首に巻き付いてる紺のネクタイも。


私の来てるグレーのスーツも。
リボンタイの白いシフォンブラウスも。


全部いらない。


渋谷くんにふれたい。
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