even if

kiss and kiss

私たちは、黙々と歩いた。

途中のコンビニでおにぎりとジュースを買って、あとは寄り道もせず、ただ黙々と。

途中からだんだん足が早くなって、渋谷くんのマンションに着くころには、二人とも猛ダッシュだった。


エレベーターの中で、息を整えていると、渋谷くんが私を壁に押し付けてそのまま唇をふさがれる。

『…ちょ…息できない。死んじゃうって…』

体を離して文句を言うと、渋谷くんは、ごめんと恥ずかしそうに謝った。


渋谷くんの部屋の玄関で、鍵をがちゃ、と閉めた瞬間から、なんだかよくわからない。


キスをしながら、靴を脱いで、たぶんベッドに行きながら、服を脱いだ…と思う。

玄関からベッドまで、ヘンゼルとグレーテルの落としたパンみたいに、服が転々と落ちていたから。

ただ、渋谷くんが、ネクタイを乱暴にゆるめて、それをシュッと引き抜いたのは覚えている。

変な言い方だけど、そのしぐさと音に、ものすごく興奮したから。



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