even if
まだ昼間だから、部屋の中は明るい。
カーテンの開かれた窓からは、青空が見える。


それでも、恥ずかしい、とは思わなかった。

渋谷くんの顔とか表情とか、体とかをちゃんと見ていたかった。


渋谷くんの唇が、耳や首筋、鎖骨をなんども往復する。

シトラスのいい香り。
渋谷くんの匂い。

大きくてひんやりとした手のひらが、私の体を撫でる。


私が身震いすると、

『…冷たい?』

渋谷くんが顔を上げて聞いた。

『…んーん…気持ちいい』

冷たくて気持ちいい、という意味で言ったのに、渋谷くんの顔が真っ赤になって、それを見た瞬間、自分の言った言葉の意味に気づいて、私の顔も真っ赤になる。


『…ほんと?』

渋谷くんが、照れ臭そうに聞いた。


『ほんと』


ほんとにほんと。
だけど、二回も言わせないで。

『そっか』


渋谷くんは、照れ臭そうにでもうれしそうにそう言って、私の胸に顔をうずめた。


『…あおい、くん』

頭がボーッとする。

渋谷くんの手が止まる。

『もう一回言って』

『あおい、くん』

『もう一回』

『碧くん』


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