even if
『…ゃん、…ちゃん!!ななちゃん!!』


碧くんのあせったような声で、私はゆっくり目を開けた。

話に聞いたことはあったけど、こんな風に本当に一瞬意識が飛んだのは初めてのことだった。


『…あ、碧くん…?』

ぼんやりと名前を呼んだら、碧くんがホッとしたように息を吐いた。


『びっくりした。大丈夫?』


私はゆっくりと頷く。

『本当に大丈夫?あの…俺、初めてだから…途中から余裕なくって…痛くなかった?大丈夫?』


私をシーツでくるんで、本当に大事なものを抱くようにそっと抱き締められる。

『…大丈夫だから』

安心させるように、碧くんの髪を撫でる。


『でも…なんか意識が…本当に痛くなかった?大丈夫?』



心配そうに、真っ直ぐに見つめられて、胸が苦しくなった。

碧くん、勘違いしてる。
そんなんじゃないのに。


『痛くなんか…なかったもん。…あの…あのね…き、気持ち…よかったの…』


そう言うと、碧くんの顔も見ずに、シーツで顔を隠した。
うわぁぁぁぁ、
これ、めちゃくちゃ恥ずかしい。


碧くんが、何も言わないので、そっと顔を出して見ると、碧くんは自分の前髪をくしゃ、とつかんで、
『あーもう。それも反則だろ』
とぶつぶつ呟いていた。


『なにが反則なの?』

『…ななちゃん、それ本当に天然?だとしたら、すごいね』

なぜか感心された。


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