even if
『あれ、まじ痛かったわ』

碧くんが、私の頬のお肉をむにっとつまみながら笑う。
私の大好きないたずらっぽい笑顔。


『…医大って6年もあるんだぜ?6年も学生してたら、ななちゃん、その間に他の誰かと結婚しちゃうかもしれないだろ…』

碧くんは、むにむにと私の頬で遊びながら、すねたようにそう言った。

『…じゃあ…急に進学するって言い出したのは、どうして?』

――俺、医大いくわ――

あまりに碧くんが真っ直ぐにそう言ったから、聞きそびれたけど、ふと今になって、急に疑問に思った。


『…ななちゃんの誕生日にさ、俺何歳までに結婚したいか、聞いただろ?…覚えてる?』

覚えてる。
…サンジュウまでにできたらいいかな。
確か、私はそう答えた。

『あれ聞いて、計算したんだよ。ななちゃんが30になるまであと6年ある。だから、ギリ間に合うって』

『…間に合う?』

『俺、絶対に6年で卒業して、医者になって帰ってくるから。待ってて。ななちゃんが30になる前に、絶対迎えにいくから』


『迎えに?』

私の頬を優しく指でなぞりながら、碧くんはキッパリと言った。


『めちゃくちゃ勉強して、医師免許とって帰ってくるから』


< 193 / 200 >

この作品をシェア

pagetop