even if
そう言って、碧くんは優しくキスをくれた。

泣かない。
絶対に泣かない。

碧くんは、ちゃんと前を見てる。

だから、寂しいなんて、絶対に言わない。


『いっぱい約束しただろ?』

碧くんはうつむいた私をのぞきこんで言う。

『北海道…?』

一番最初にした約束。
いけるわけないじゃない、って私は泣いたね。
そして、そのあと、初めてのキスをしたね。


『そう。北海道。レンタカーで一周しよう。ななちゃんは運転しなくていいからな?』

碧くんのからかうような言い方に、思わず笑顔になる。

『シンガポールにも行こう。今度はななちゃんと一緒に行きたい』

マーライオンはもういいけど。碧くんはそう言って笑う。


『あとは、ななちゃんに、ハンバーグとからあげとオムライス作ってもらうんだっけ?』

それは…厳密に言うと約束はしてないけど…。

『グリーンピースは抜くんだよね?』

そうそう。碧くんはうれしそうに笑って続ける。

『日本犬を二人で飼う』

『しっぽがふさふさの子がいいな。ちゃんとしつけるの。チョビみたいにならないように』

『ななちゃんの家族にも会わせてもらう』

『うん。雄太もチョビも本当にバカだから、覚悟しといてね?』

私の言葉に、碧くんは吹き出す。
揺れる胸板にそっと頬を寄せた。


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