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桜井先生がおすすめだという焼き鳥やさんは、平日なのに、混んでいた。

私たちはカウンターに並んで座り、ビールで乾杯する。

久々の生ビールが美味しすぎる。

一気に半分ほど飲んで、ジョッキを置くと、桜井先生がおかしそうに笑っている。

『…え?なんですか?』

不思議に思って尋ねてみれば、

『いやぁ、なんか平井先生がそんなにビールをグビグビ飲むとは思わなくて…』

そう言って笑う桜井先生のジョッキにも、もう少ししかビールは残っていない。

『ビール、好きなんですね。イメージと違いすぎてつい、笑ってしまいました』

『イメージ、ですか?』

残りのビールを飲みながら聞く。

『あぁ、すみません。悪い意味ではないんです。ただ、平井先生、顔がその…幼いので。ビールが好きだなんて意外だなぁ、と』

桜井先生は、店員さんを呼び止めると、自分と私のビールのおかわりを頼んで、付きだしにお箸をのばした。

『あぁ、よく言われます。身分証明書を求められることなんてざらです』

塩味のせせりを食べながら、二杯目のビールに手をのばす。

『うわ、おいしい』

桜井先生は嬉しそうに笑って、

『良かった。もっとお洒落なところの方がいいかな、と思ったんですが、そういう店知らなくて』

ビールを美味しそうにグビグビと飲む。
喉仏が上下に動くのが見ていて楽しかった。
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