even if
『わかりました。一度話してみます』

『お願いします』
桜井先生はにっこりと笑う。
よく見ると目の縁がほんのり赤い。

気がつけば、ビールは5杯目だった。

『あ、そうだ』

私も聞きたいことがある。

『男子生徒たちが、あの…なんと言いますか…性的な話題ばかりしてくるんですが…』

『…は?性的な…話題ですか?』

『あの…その…つまりエッチなことと言いますか…』

あぁ、と納得したように桜井先生は呟いた。

『平井先生にそういう話をふることで、何て言いますか…反応を見て楽しんでるんだと思いますよ。あれくらいの男子って、やっぱりそういう話に興味津々ですから。でも、あいつらもね、同年代の女子相手には出来ないんです。ひかれちゃいますからね。だから、平井先生にするんじゃないかなぁ』

『私なら、ひかれない、ということですか?』

『ひかれない、と言うか、許してくれる、と思ってるのかな。そういう話をしたいけど、同年代の女子には出来ない。でも、平井先生ならこんな話をしても大丈夫だろう、と』

『つまり、一種のストレス発散なんでしょうか?』

と聞いてみたら、桜井先生はプッと吹き出した。

『深いですね。まぁそうかもしれません。平井先生との会話が、ガス抜きになるのかもしれませんね』

『ガス抜きですか…なるほど』

大きく頷きながら、そうかそうか、と納得する。
私は真面目に話しているのに、桜井先生はなぜかくっくっ、と笑って、

『単純に反応が面白い、っていうのもあるかもしれないですけど』

と付け足した。

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