even if
その人とは、高校二年の夏、友だちの紹介で知り合った。
いわゆるコンパってやつ。
相手は他校のひとつ上の先輩だった。
先に好きになったのは向こうだった。

『こんなに人を好きになったのは初めてだ』
その人は言った。
『俺はずっと夏々子だけが好きだよ』
とも言った。
私はその言葉を信じた。

求められるままに、キスもしたし、体も許した。
その人は『好きだから』という言葉で私を縛り付けた。

『外で出したら大丈夫』そう言って、避妊もしてくれなかった。

毎月毎月、きちんと生理が来るとホッとして、一日でも遅れると、吐きそうなくらいうろたえた。一人で。

上にのしかかる好きなはずの人を、いつも冷静に見上げていた。
いつも、痛くて、苦痛だった。

いつしか、罪悪感を感じるようになった。
好きな人とキスをしたり、体を重ねることに、何故、罪悪感を感じるのか、17歳の私には分からなかった。

今なら分かる。

私は心のどこかでちゃんと知っていた。本当は心から愛されてなどいないことに。



そういうのをデートDVというのよ、と教えてくれたのが、当時通っていた高校の保健室の先生だった。


『その人は、本当にあなたを愛しているのかな』

その一言で、私は彼と別れる決心がついた。



別れてよかったと、今でも思う。


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