even if
ドアがパタン、と閉まると、授業の終わりを告げるチャイムが聞こえてきた。


『戻りますって…今、終わったじゃない…』

一人で苦笑していると、コンコンッと弾むように、ドアをノックする音がした。

『どうぞ』

デスクの上にたくさん乗せられた資料を、引き出しに突っ込みながら返事をする。

『ななちゃん先生ー、患者です』

そう言いながら入ってきたのは、この部屋には一番関係のなさそうな元気の塊みたいな生徒。

『綾部(あやべ)さん、いつもありがとう』

綾部真奈美(まなみ)の肩にもたれるようにしながら、入ってきたのは、この部屋が誰よりも似合う、線の細い少女、笹野由衣(ささのゆい)。
真っ青な顔をしている、笹野さんに手を差し伸べてひとまずソファに座らせる。

『笹野さん、貧血かな?』

『はい、たぶん』

『少し横になって。ベッド、今は全部空いてるから、どこでもいいよ』

笹野さんを支えて、ベッドに寝かせると、布団をかけてから、カーテンをそっと閉めた。


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