even if
ブラウスに着替えてジャージをたたんでいると、ノックもせず渋谷くんが入ってきた。

『ねぇ、ほんと。ノックしようか』

『あ、ちゃんと着替えてる。えらいえらい』

またも、私の言葉はスルー。

『どうしてジャージはダメなのよ』

結構、似合ってたと思うんだけど。
なんて心の中で思っていると、

『ジャージ姿、かわいかったから。他のやつに見せたくなかった』

腕組みをしながら、壁にもたれて涼しい顔で言う。

はぁ?
私は首だけで振り返る。

『服濡らされるとか、無防備すぎるだろ。ななちゃん、ほんと、気を付けろよ』

え?
なんで私が怒られてるの?

『分かった?』

渋谷くんは怖い顔をしながら、じりじりと近付いてくる。

『…はい』

あまりにも怖い顔をするから、思わず返事をしてしまった。

『うんうん』

渋谷くんは、急にパッと笑顔になって、私の頭をよしよし、となでると、

『やっぱり寝る』

カーテンをシャッとひいて中に入っていった。
あっけに取られた私を残して。
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