even if
あろうことか、私は少しうとうとしていた。

この状況は、ものすごくドキドキしていたけど、同時にものすごく心地よかった。

布団は暖かくて、渋谷くんの匂いがして、背中に感じる渋谷くんの腕も、ときたま頭をなでる手のひらも、渋谷くんの心臓の音も、からめた足も、何もかもが心地よかった。


五分か十分か1時間か。


目が覚めて初めて、自分が寝ていたことに気がついた。

小さく動くと、
『起きた?』

渋谷くんが、少し胸を離して、私の顔をのぞきこむ。

『寝ちゃった』

『いいよ、好きなだけ寝てて』

私を抱き直し、渋谷くんが言う。

『一応…看病しにきたんだけど』

『いいよ。これで十分』

親鳥が卵を抱くみたいに、包み込まれる。

髪を撫でていた手が止まる。
そして、髪にキスをひとつ。


いつまでもこうしていたいな、と私は思った。

理由も考えず、言い訳も探さず、ただ渋谷くんの腕の中で眠っていたい。


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