even if
次の日、渋谷くんは休みだった。
かなり熱高そうだったから、大丈夫だろうか。
でも、渋谷くんが休みだと知って、安堵した自分もいた。
どんな顔をして会えばいいか、分からなかったから。
教頭から言われていた調査資料を作成しながら、気が付けば渋谷くんのことばかり考えている。
朝からずっとしているのに、全く進んでいない。
遅々として進まない事務仕事に嫌気がさして来た頃、お昼休みになった。
何人かの生徒が遊びに来て、保健室は一気に賑やかになる。
『ななちゃんせんせっ』
扉から顔を出したのは、松原さんだった。
渋谷くんを好きな松原さん…。
昨日、私の髪をキスをした渋谷くんを思い出して、上手く笑えなかった。
『ななちゃん先生、どしたの?』
他の女子生徒たちにつつかれ、私は慌てて笑顔を作る。
『今日は碧が休みだから、暇なんだ』
松原さんは長い髪をくるくると指に巻き付けながら、つまらなさそうに言う。
『渋谷くん、仮病かな』
他の女子生徒が言うと、
『碧は仮病なんか使わないよ。碧ってああ見えて意外と律儀っていうか、ちゃんとしてるから』
松原さんはしあわせそうに笑って答える。
『大丈夫かなぁ、碧。心配…』
『愛ってほんと、渋谷くん好きだよね』
『うん、大好き。明日は来るかなぁ、碧』
大好き。
あんな風に、自分の気持ちを声に出して言えるのが羨ましいと思った。
これが若さ、というものだろうか。
私もこんな風に、堂々と言えていた時期があったのに。
私とこの子達の距離を感じた。
それはずっと縮まることがないように感じた。
同じ時間を過ごしていても、きっと埋まることのない、24歳と18歳の距離。
かなり熱高そうだったから、大丈夫だろうか。
でも、渋谷くんが休みだと知って、安堵した自分もいた。
どんな顔をして会えばいいか、分からなかったから。
教頭から言われていた調査資料を作成しながら、気が付けば渋谷くんのことばかり考えている。
朝からずっとしているのに、全く進んでいない。
遅々として進まない事務仕事に嫌気がさして来た頃、お昼休みになった。
何人かの生徒が遊びに来て、保健室は一気に賑やかになる。
『ななちゃんせんせっ』
扉から顔を出したのは、松原さんだった。
渋谷くんを好きな松原さん…。
昨日、私の髪をキスをした渋谷くんを思い出して、上手く笑えなかった。
『ななちゃん先生、どしたの?』
他の女子生徒たちにつつかれ、私は慌てて笑顔を作る。
『今日は碧が休みだから、暇なんだ』
松原さんは長い髪をくるくると指に巻き付けながら、つまらなさそうに言う。
『渋谷くん、仮病かな』
他の女子生徒が言うと、
『碧は仮病なんか使わないよ。碧ってああ見えて意外と律儀っていうか、ちゃんとしてるから』
松原さんはしあわせそうに笑って答える。
『大丈夫かなぁ、碧。心配…』
『愛ってほんと、渋谷くん好きだよね』
『うん、大好き。明日は来るかなぁ、碧』
大好き。
あんな風に、自分の気持ちを声に出して言えるのが羨ましいと思った。
これが若さ、というものだろうか。
私もこんな風に、堂々と言えていた時期があったのに。
私とこの子達の距離を感じた。
それはずっと縮まることがないように感じた。
同じ時間を過ごしていても、きっと埋まることのない、24歳と18歳の距離。