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結局、8時まで残業して、提出書類を作り上げた。
教頭の机に置いて、保健室の鍵を金庫にしまうと、どっと疲れが押し寄せてくる。

回り道をして、渋谷くんのマンションの前を通った。
渋谷くんの部屋の灯りがついてるのを見て、なんとなくほっとする。

それからすぐに、私ってストーカーじゃん、と一人で焦った。

明日は来ますように。

曇り空に願いをかけた。




翌日、渋谷くんは登校していた。
各クラスの欠席状況を見てそれを知った時、心からほっとした。



プールの水質検査をしに行く途中で、校内巡視をしていると、空き時間なのか、教材室から出てきた桜井先生に会った。


『桜井先生!?どうしたんですか!?』

桜井先生の肘に大きな擦り傷が出来ている。


『あぁ、ちょっと…昼休みに生徒たちとサッカーしてたら怪我しました』

桜井先生は、ははは、と笑っている。

『結構…血が出てますけど』

近寄って見てみると、泥もついている。

『もしかして、洗ってません?』

『あぁ、そう言えば洗ってないな』

ははは、と笑う桜井先生を見て、私は顔をしかめる。


『怪我したら、まず洗うのが基本ですよ』

サッカー部の顧問なのに、こんなことでいいのか。


『保健室、行きましょう』

私がスタスタ歩き出すと、桜井先生は
『あ、はい』
と素直についてきた。


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