even if
『こないだは…ありがとう』

指をからませたまま、渋谷くんがぼそっと言った。

『うん』

長く細い指は、今日はひんやりとしている。


『ななちゃん』

『なぁに?』

『他の男に触れさせないでよ』

『…え?』

瞬きをしながら、聞き返す。

『他の男?』

『俺以外の男に触れさせないでよ。俺以外の男に笑いかけないでよ』

渋谷くんは、絡ませた指に力を入れた。

『ななちゃん…好きだよ…』





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