even if


え?


たっぷり10秒くらい考えて、

『今、なんて?』

顔を上げたら、渋谷くんは顔を真っ赤にしていた。

『…聞こえただろ』

『聞こえた…けど…あの…それは…どういう…』

『はぁ?それ聞くか、普通』

眉にシワを寄せて、少し怖い顔をする。

『…私…』

私…。

私…?


私は今何を言おうとしたんだろう。
心に蓋をする。
言葉に鍵をかける。

『…答えは聞いてない』

口をつぐんで俯いた私を見て、渋谷くんはぶっきらぼうにそう言った。


それから、急に私をギュッと抱き締めて、

『もう一回言おうか?』

と言った。


『…ななちゃん、好きだよ』



ちゃんと聞こえてるよ。

渋谷くんの胸の中で、小さく頷いた。




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