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保健室の先生。
それが私の職業。
正式名称は、養護教諭。
私が、ここ私立成翔学院高校の養護教諭になったのは、たった一ヶ月前のこと。
高校は、駅から緩やかな長い坂道を登ったところにある。
電車通学、徒歩通学、自転車通学の生徒がいるけど、毎日この坂道を通ったら、三年間後にはみんな足腰がずいぶん強くなるだろう。
去年一年間、他の女子高で育休の代替職員として働き、今年、成翔学院にようやく採用が決まった。
と、いっても、まだ非常勤講師で来年は正式に採用される…予定。
五月の連休も終わったというのに、山のような書類は片付けても片付けても終わらない。
『保健室の先生って暇そう』
生徒たちはみなそう言う。
私だって、生徒だった頃はそう思ってた。
いつ行っても、デスクに座って、ただのんびりしているように見えた。
私も今、生徒たちに、
『ななちゃん先生はいつも暇そうでいいなぁ』
と言われる。
実際には、県教委からの調査の回答に、身体測定の記録事務、保健指導のための資料作りや掲示板の作成、物品の管理や水道水、プール水の検査など、仕事は山のようにある。
それでも、生徒たちには、『暇そう』に見えるようにしなければならない。
保健室の先生が、忙しそうにしていたら、生徒が話したいことも話せないからだ。
『ななちゃん先生、暇そう』
そう言われるたびに、私は心の中で安堵している。