even if
いつものベッドに潜り込んだ渋谷くんをぼんやりと見ていた。

一緒に行こうよ
北海道

行けるわけがないのに。
北海道はそのへんにあるわけじゃないのに。

渋谷くんは、本気で行けると思ってるんだろうか。
二人で。

どうして、出来もしない約束をしようとするのだろう。
守れない約束に、なんの意味があるのだろう。

『…行けるわけないじゃない』

小さな抗議の声は、静かな保健室を漂い、渋谷くんの耳に届いた。

『なんで?』

渋谷くんが起き上がり、聞く。
不思議でたまらない、という顔で。

『…北海道だよ?』

『北海道だからなに?飛行機で行けばいいじゃん』

渋谷くんを睨んだ。

『距離のこと言ってるんじゃないよ』

『じゃあ、なに?』

『…一緒になんて…行けるわけないじゃない』

『なんでだよ?』


渋谷くんは少しムッとした顔をした。

なんでだよ?



それは…



『…私が先生であなたが生徒だからだよ』


それが理由。

私が渋谷くんと北海道に行けない理由。

埋まることのない、24歳と18歳の距離だよ。



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