even if
七月に入り、最近晴れの天気が続いている。
梅雨明け宣言はまだ出ていないけど、もう夏は確実に始まっていた。

<留守にしてます。ご用の方は職員室まで>

札をかけて、私は屋上に向かった。
布団をふかふかにするために。

シーツや布団を物干し竿にかけて、手すりにもたれるとグラウンドを見下ろした。
グラウンドには誰もいない。
とても静かで、学校にいるのは私だけかもしれない、なんて思った。


屋上の扉が閉まる重い音で振り返ると、眩しさに顔をしかめた渋谷くんが立っていた。

『見つけた』

渋谷くんは、私を見ると、嬉しそうに笑う。

『渋谷くん…よくここが分かったね』

『天気いいから、ここかなって』

『もしかして、他も探した?』

『うん。会いたかったから』

『そう』

出来るだけ、なんでもない声を出して、シーツとシーツの間に隠れた。
顔を見られたら、きっと見抜かれてしまう。
本当はそう言われて、すごく嬉しかったことを。





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