even if
毎年、七夕には嫌がらせのように雨が降るのに、今年に限ってよく晴れた夜空。
『笹の葉さーらさら』
自分の部屋の小さなベランダにもたれて、歌った。
この歌が昔から好きだった。
特に、
空から見てる、
の部分が。
お星さまは本当に空から見てるんだろうか。
こんな私を。
見てたら、きっと笑ってるに違いない。
時計を見ると、7時50分だ。
あの日から三日間、渋谷くんは保健室に顔を出さなかった。
そして、そのまま、今日を迎えた。
――偶然会うんだよ――
笑ってしまう。
そんな偶然、あるわけないじゃない。
ベランダの手すりに額を乗せた。
手すりはひんやりとしていた。
最近、忙しくて掃除もしてないから、額が汚れそう。
いいや、別に。
今からお風呂に入って寝るだけなんだし。
汚れたって平気。
お風呂に入ろうかな。
8時から、面白いテレビあったっけ。
テレビの方を見たら、時計が目に入っちゃったよ。
時間なんて気にしてないんだけどね。
…ほんとに。
7時55分
――誕生日に聞きたいんだよ――
無理だよ、って言ったでしょ。
頭を上げて、もう一度星空を見つめる。
――嫌なら嫌だって言えばいいだろ――
そう言った渋谷くんの怒った声と悲しい目を思い出す。
――もっと、普通の恋愛すれば――
私はそう言った。
言えば、渋谷くんがあんな顔をすると分かっていたのに。
悲しませた。
だから、きっと偶然は起きない。
渋谷くんは来ないから。
ちらり、と横目で部屋の中を見た。
7時58分。
――誕生日に聞きたいんだよ
偶然、会うんだよ、俺たちは
分かった?――
『…っもう』
うるさいな。
渋谷くん。
頭の中で、さっきからうるさいよ。
8時00分
私は部屋を飛び出した。
ベランダの網戸もそのままで。
玄関の鍵も閉めずに。
『笹の葉さーらさら』
自分の部屋の小さなベランダにもたれて、歌った。
この歌が昔から好きだった。
特に、
空から見てる、
の部分が。
お星さまは本当に空から見てるんだろうか。
こんな私を。
見てたら、きっと笑ってるに違いない。
時計を見ると、7時50分だ。
あの日から三日間、渋谷くんは保健室に顔を出さなかった。
そして、そのまま、今日を迎えた。
――偶然会うんだよ――
笑ってしまう。
そんな偶然、あるわけないじゃない。
ベランダの手すりに額を乗せた。
手すりはひんやりとしていた。
最近、忙しくて掃除もしてないから、額が汚れそう。
いいや、別に。
今からお風呂に入って寝るだけなんだし。
汚れたって平気。
お風呂に入ろうかな。
8時から、面白いテレビあったっけ。
テレビの方を見たら、時計が目に入っちゃったよ。
時間なんて気にしてないんだけどね。
…ほんとに。
7時55分
――誕生日に聞きたいんだよ――
無理だよ、って言ったでしょ。
頭を上げて、もう一度星空を見つめる。
――嫌なら嫌だって言えばいいだろ――
そう言った渋谷くんの怒った声と悲しい目を思い出す。
――もっと、普通の恋愛すれば――
私はそう言った。
言えば、渋谷くんがあんな顔をすると分かっていたのに。
悲しませた。
だから、きっと偶然は起きない。
渋谷くんは来ないから。
ちらり、と横目で部屋の中を見た。
7時58分。
――誕生日に聞きたいんだよ
偶然、会うんだよ、俺たちは
分かった?――
『…っもう』
うるさいな。
渋谷くん。
頭の中で、さっきからうるさいよ。
8時00分
私は部屋を飛び出した。
ベランダの網戸もそのままで。
玄関の鍵も閉めずに。