even if
おでこ。
渋谷くんが呟いた。

『汚れてるよ。ななちゃん』

そう言うと、指先でこすってくれる。
あぁ、さっきベランダに額をつけた時の。
やっぱり、汚れてたんだ。

『何したら、こんなところが汚れるの?』

よし、きれいになった。
渋谷くんが優しく目を細めて笑う。


『聞きそびれてたんだけどさ。ななちゃんは誕生日いつ?』

『私は7月27日。夏に生まれたから夏々子』

渋谷くんは、少し首をかしげたあとに、ちらり、と星空を見た。

『夏休みに入ってるから…きっとその日も偶然に会うね、俺たち』

『偶然に?こんな風に?こんなところで、偶然に?』

『そうだね。信じられない確率だけど』


渋谷くんが、足元の小石を足でぐりぐりと踏みながら言った。



< 86 / 200 >

この作品をシェア

pagetop