even if
『渋谷くん』

『ん?』

『お誕生日おめでとう』

『ありがとう』

18歳の渋谷くんが照れ臭そうに笑う。

『プレゼントは…ないんだけどね』

『いいよ、そんなの。会えただけで十分。本当にありがとう』


目的は果たせた。
偶然、こんなとこで会えて、本当によかった。
これ以上、渋谷くんの顔を見ていたら、私の口からするり、と本当の気持ちが溢れてしまう。


だから、渋谷くんに、にっこりと笑いかけて、


『じゃあ…帰るね』

ハイツの階段に足をかけた。


そのまま2段上って振り返る。
階段の下にいる渋谷くんが、にっこりと笑い返してくれた。


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