恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜

あの合コン日から二週間近く経ち、ラン

チ中に藤原さんの名前を出すと動揺する

奈々。

藤原さんとの間に何かあったのは確かな

のに、何も話そうとしない奈々。

「気持ちの整理がついたら話するから今

はまだ何も聞かないで…」

と言うので、心配になる。

飯島さんに電話して、藤原さんの様子を

聞いてみなければ‼︎

そう、二週間経つが向こうから一向に連

絡がない。こっちも連絡してないけど、

先に言い出したのは、あっちでしょう。

人の事を巻き込んだんだから、向こうか

ら連絡してくるべきよ。

(何がお疲れ様会しようね)よ。

別に、社交辞令だってわかってるわよ。

でも、私達、2人をくっつける為に手を

結んだのよね⁈

なのに、2人を再会のための合コンをセ

ッティングしたら終わりなの⁈

向こうの状況報告もないと今後の対応も

できないじゃないの。

その日、早速飯島さんに連絡をとってコ

ンフォルトで待ち合わせる。

「いらっしゃいませ」

お店に入るとマスターの大輔さんが出迎

えてくれた。

「この間は、美鈴が迷惑かけたね」

「いえ、そんなことないです。」

苦笑するマスター。

「今日は、何にする?」

「そうですね。私、もっぱらビール派な

のでカクテル詳しくないんです。変わっ

たビールってありますか?」

「あるよ。……ところで今日は待ち合わ

せ⁈」

「はい、飯島さんとなんです」

「……そう。あいつに深入りしないほう

がいいよ。悪い奴じゃないけど……」

一度口を閉じ考えるマスター。

「まぁ、俺が偉そうに言う事じゃないん

だけど、美鈴の知り合いだし忠告だけね」

マスターにおすすめビールを出してもら

って待っているが約束の20時を過ぎても

、彼は来る気配来ない。

21時を過ぎても来ないなら帰ろうと思っ

ていると女連れで現れた。

はい⁈

待たせておいて女連れってどういう事よ。

悪びれもなく隣に座る。

「お待たせ……マスター、俺、ビール。

君は⁇」

連れてきた女に飲み物を聞くとマスター

に目配せし、こちらに向きを変える。

「俺に話ってなんだった?」

なに⁈

藤原さんと奈々のことに決まってるでし

ょう。

イライラする早希。

「そこの女性は?」

「あぁ、気にしないで‼︎ここに来る途中

、一緒に飲まないって誘われただげだか

ら飲んだら帰るよね」

隣の女にいつも見せる極上の笑顔で確認

する飯島さん。

驚き目が開いたままの女。

「俺、友達と用事あるからって言ったの

に、それでもいいから一緒に行くってつ

いて来たの君だよ」

「と、友達が女の人だなんて言わなかっ

たじゃない。」

「そうだっけ…飲む以外のこと期待して

た⁈今日は、友達優先だからまた、今度

ね。」

わっ、サイテー。

女の唇に軽くキスをする飯島さん。

「うん。今度、約束ね」

女は、頬を染め帰っていった。

なんなの⁈

私の常識外の人間ですか?

「で、拓海と奈々ちゃんのこと?」

はい。それ以外で私達が会う理由ありま

すか?

「そうですけど…」

一つため息をついて飯島さんを見る。

飯島さんは、何もなかったように話し始

める。

「最近の拓海は、スマホの画面ばかり見

てるかな⁈前まで、あんなに見ることな

かったのにきっと奈々ちゃんからの連絡

でも待っているんだと思う。あいつ、今

まで固執するってことなくて淡白って言

うの⁈去る者追わずみたいな奴だったん

だよね。そんな奴があんな必死な顔で追

いかけるぐらいだから、奈々ちゃんには

本気なんだと俺は思うけど、あいつ、俺

と違って女の子の扱いが下手なんだ。2

人がうまくいくかは、奈々ちゃん次第っ

てところかな⁈」

これで満足とでもいうように笑顔を向け

る。

なんですか?

無駄に多い笑顔。

でも、なんだろう⁇

その笑顔の裏に何かある気がするのは気

のせいかな⁇

「聞いてる⁇早希ちゃん。」

「……⁈」

今、なんて呼びました⁈

気のせいよね。

「奈々ちゃんの最近の様子はどう?」

「ちゃんと聞いてますよ。奈々は、悩ん

でるみたいです。2人に何かあったのは

確かなのに、相談してくれなくて。あの

子は、積極的になれる子じゃないんです

。だから、本当に藤原さんを好きなら、

幸せになってほしいから…」

言葉が詰まる早希。

「そうだね。2人には幸せになってほし

いよね」

クスっと笑い、遠くを見る飯島さん。

「じゃあ、2人の為にしばらくお互いの

友達の様子を報告し合おう。毎日は無理

だけど、そうだな、週1ぐらいここで待

ち合わせで報告会。」

「メールとかじゃダメですか?」

「メールだと伝わらないことってあるだ

ろう。せっかく仲良くなったんだし、あ

いつらの為にも作戦立てやすいと思うけ

ど」

「そうですか⁈」

「そうそう、俺、週末はデートで忙しい

から木曜日にしない?」

今、さらっとデートって言いませんでし

たか?

「えっ、いくら友達の為といっても女性

と会ってて彼女さん気を悪くしません

か?」

もしかして、先ほどの女性⁈

「大丈夫だよ。どの子ともそんな関係じ

ゃないから。」

複数ですか‼︎

本当にサイテー。

でも、奈々の為にもこの人の協力が必要

「わかりました。飯島さんさえよければ

木曜日にこの時間で待ち合わせでいいで

す。」

「よかった」

始めて見る屈託のない笑顔

なんだろう⁇

胸が騒つく。

なに⁈

ドキドキするのは気のせい⁈

「それから、さっきから下の名前で呼ば

れてるんですけど、名字で呼んでくれま

せんか?」

「金森さんって他人ぽいよ。俺たちチー

ム‼︎俺のことも雅樹って呼ぶこと。それ

と、よそよそしい敬語も禁止」

「……」

飯島さんの視線が痛い。

「わかったわよ。雅樹って言えばいいん

でしょう」

素直になれず、無愛想に返事すると急に

頭をなでられ、頬が染まる。

なぜ、頭を撫でるの?

「素直じゃない早希ちゃんってかわいい

な…」

顔をくしゃくしゃにして笑う彼の笑顔に

胸が高鳴る。

なに⁈

心臓が壊れそうなぐらいに速く動く。

私、もしかしたら彼のこと好きになった

の⁈

そんな訳ない。

ちょっと、驚いただけよ。
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