恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜
このもやもやした気持ちに気づいてしま
うと。もう、誤魔化せない。
軽薄で自分の武器を理解し、それを利
用して魅了する極上の笑顔。
なにも感情のない笑みに時折見せる屈託
のない笑顔。
サイテーだと何度も思いあんな男好きに
ならないと思っていたのに……
好きだと認めてしまうとドロドロした感
情が出てくる。
奈々にそんなふうに笑わないで…
その手を触れないでほしい。
私だけを見てほしい…
気づけば、横にいた藤原さんが雅樹と奈
々を見て苦々しく舌打ちする。
この人も嫉妬しているのだろうか⁈
冷たいビールを持ち奈々と雅樹の元へ向
かい、真剣に話す2人の背後から奈々の
頬に冷たいビールをあてる。
驚く奈々。
「ごめんね…」
心の中で(やつ当たりして)と付け足す。
藤原さんに追い払われる雅樹。
でも、どこかウキウキしている。
なんだろう?
そう思う間に、雅樹に手を掴まれ2人の
元を離れた。
花火が終盤に差し掛かる頃、少し離れた
奈々達を覗き見る。
手を繋ぎ帰って行く2人は微笑ましい。
惹かれあっている2人が羨ましい。
私はなぜ、とんでもないこの男を好きに
なってしまったのか⁈
まるで登頂が困難な山に挑もうとしてい
る登山者のようだ。
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「はー、奈々、あんたバカなの⁇」
休み明けに奈々とランチに出かけた。
付き合うとか好きだとかないのにいきな
り鍵ってなに⁈
奈々は、もごもごといい訳じみた説明を
するけど…鍵をもらうの前に確認しない
といけない事ないの⁈
フォークの先を奈々に向け睨みを利かす。
話しを聞いているだけで、藤原さんの奈
々に対する思いが伝わってくるのに、自
分に自信のない奈々は愛されていること
に気づいていない。
(あんたは、かわいいわよ。自信持ちなさ
いよね)
ボソッとつぶやくと突然、思い出したか
のように質問してくる奈々。
「私の事は置いておいて、早希は飯島さ
んとどうなってるの⁇好きなんでしょう」
奈々には、バレてたか…
「ぶっ…何よ、突然…えっと、…何もな
いわよ。多分」
「多分ってどういう事⁇」
「彼、拓海さん程じゃないかもしれない
けどモテるのよ」
「確かに優しいし、気遣いのできる人だ
し、かっこいいからモテるわよね。それ
で⁈」
気遣いのできる人⁇
奈々にはそう見えるってこと⁈