恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜
抱えられすぐ側の路地裏の壁を背に押し
付けられ、身動きをとることを許さない
雅樹。
頭の奥がぼーっと霞んでいく中、呼吸し
ようとする唇を雅樹は許してくれず唇を
すぐに塞がれてしまう。
どれだけの時間、キスに夢中になってい
たのだろう⁇
彼の胸に顔を埋め呼吸を整えると私を包
み込む彼の体温。
この温もりが欲しい。
離れる腕にしがみつき、彼の顔を見つめ
てつぶやいた。
「好き…雅樹が好きなの…」
「………………ごめん」
なぜ、悲しそうな表情をするの⁈
振られたのは私なのに…
どうやって部屋まで帰ってきたかわから
ない。
なぜ、キスをしてしまったの。
触れなければ、あんなに激しく求めるキ
スをしなくて済んだのに…
もう、雅樹に会えない。
私に残ったのは後悔しかなかった。
次の日の朝、ロッカールームで奈々と2
人きり。
「奈々、あれから進展あったの⁈」
「うん、あのね………」
今までの経緯を話す奈々。
言葉が足りないが奈々を愛してやまない
拓海。
それなのに不安が拭いきれない奈々。
聞いてる方にしたら惚気でしかない。
「ハァー、何その甘さ加減。もう、惚気
にしか聞こえない。こっちなんて…」
「こっちなんて…って何⁇」
「見ないでよ。なんでもないから…。も
う、今日は飲みに行くわよ」
もう、やけ酒よ。
飲んで忘れてやる。
「えっ、今日⁇」
「何⁈用事でもあるの?」
「私、拓海さんと約束あるんだけど‼︎」
「…よし、拓海さんも呼んじゃいなさい
よ。もう、じれったい。この際、私がひ
と肌脱ぐから今すぐ連絡しなさい」
「来ないかもしれないよ」
「来るわよ」
自分のいないお酒の席に奈々を置いてお
くような男じゃないでしょう。
メールを送る奈々。
「大丈夫だって…」
「ほらね」
待ち合わせ場所を伝える為に返信する奈
々が叫んだ。
「えっ…」
奈々のスマホの画面を覗く。
「お詫びしてだって…奈々、何する⁈奈
々からキスでもしたら喜ぶんじゃないの
。それとも、思いきって好きって言うと
か…」
私は、好きって伝えて振られたけど、奈
々は大丈夫よ。
「やだ…ハードル上げないでよ。きっと
、御飯作ってとかだって…」
はいはい…男心がわからないんだから…
拓海さんも可哀想だわ。
2人の為にも、やっぱり私がひと肌脱ぐ
しかないわね。
「はい、はい。考え事は後回し。仕事行
くわよ」