恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜
笑顔の裏の真実
「早希ちゃん、いらっしゃい」
マスターが笑顔で出迎えてくれる。
「昨日は、すみませんでした。あの、お
金支払いに来ました」
「あぁ、雅樹が払うって言ってたから、
早希ちゃんが払う必要ないよ」
「そんな訳には……」
出したお金を受け取らないマスター。
「あいつが来て先に支払われてたら、あ
いつの立場ないだろう。だから、早希ち
ゃんは気にしなくていいから…ね」
本当にいいのかなぁ……
「でも……」
「せっかく寄ってくれたんだし何かカク
テル作るからゆっくりして行ってよ」
笑みを浮かべカクテルを作り出すマスタ
ー。
なんか、ごまかされた感じ…に仕方なく
返事をする。
「……は…い」
一杯だけ頂いたら支払いして帰ろう。
「ところで早希ちゃん、雅樹と付き合う
ことになったの⁈」
昨日、マスターの前で泣き顔をさらし
たんだった。
あいつとは、距離を置いた方がいいって
言ってたから心配してくれてるんだよね。
「…たぶん、そうだと思いますけど付き
合おうとは言われてないので自信ないで
すけど……」
「自信持っていいと思うよ。あいつのあ
んな焦った顔初めて見たし、昔から知っ
ている俺から見たらだいぶ変わったと思
うけどね」
「どんな風に変わったんですか?」
「それ、今聞く⁈」
「はい…聞きたいです。今、すごく不安
なんです。話聞いたら自信持ってそうな
のでお願いします」
「プッ…」
吹き出すマスター。
「ごめん、さすが雅樹の仮面を壊しただ
けのことあるよ。早希ちゃん、おもしろ
いね」
なにかおかしなこと言っただろうか?
おかしなこと言ってるのはマスターだと
思うけど…
雅樹もいつも肝心な言葉を意味深な言葉
に変えてしまうけどこの人も同じ。
「仮面ってなんですか?」
「あいつの作った笑顔ってとこかな。男
同志だと素のあいつのままなんだけど、
女の子の前だと顔は笑ってるけど目が笑
ってないんだよね」
「それ、私、気づいてました。すごく素
敵な笑顔なのに目が冷たいんですよね。
でも、ときどき見せてくれる笑顔の中に
作ってない笑顔と言うか自然な笑顔があ
って…優しさが伝わってくるんです」
頬を染める早希。