恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜
(うん、いいんじゃない‼︎雅樹もきれいっ
て言ってくれるかなぁ)
ピンヒールを履き、扉を開けると誰もい
ない部屋に明るく声をかける。
「行ってきまーす。」
ーー
ーーーー
ーーーーーー
雅樹のお泊まり用の部屋着と下着を用意
しようとショッピングモールへ足を運ん
だ。
いざ、紳士用の下着売り場前。
トランクス、ブリーフ、ボクサーパンツ
にたくさんの柄模様にあ然とする。
1人、ウロウロするのも恥ずかしく結局
選べずに上下セットのスエットを買いモ
ールを後にした。
スマホの時刻を見れば、まだ約束の時間
まで1時間以上ある。
時間をつぶそうと歩いていくと、交差点
の向こう側に見たことのある男。
その横には、可愛らしい女の人が並んで
立っていた。
うそ……
優しい眼差しで彼女を見つめる雅樹。
その人は誰⁇
やだ、なんでそんな目で彼女を見ている
の⁈
彼女が用事って断った理由なの⁈
胸の奥が不安で痛い…
交差点を渡り近づいてくる。
慌てて私が逃げ込んだ店の前で、雅樹は
彼女の頭を撫で微笑んだように見えた。
頭を撫でるのは、雅樹の癖
私以外の女にそんなことしないで…
やだよ…
そんな顔で彼女を見ないでよ…
どうして、切なそうに微笑むの⁈
………………。
ヒールでかかとを傷めても夢中で歩いて
どこをどう歩いて部屋まで帰ってきたの
かさえわからずに、暗い部屋の真ん中で
座り込んでいた。
カバンの中でなる着信音にも気付かずに
頭に過る2人の姿を思い浮かべ、頬を濡
らす。
部屋を出る時には想像しなかった。
勘違いであって欲しい。
私以外の女とは、別れたと言った言葉を
信じたい。
彼女は誰⁇
雅樹のスマホに時折かかってくる女性。
《真愛実》
最初は、出ることも拒んでいた雅樹も最
近は折り返しかけていることに気づいて
いた。
この間も、雅樹の家で早希がシャワーを
浴びて出てくると扉の向こうから聞こえ
てくる話し声。
「だから、何度も言ってるだろう。お前
は大事だけど、いまさら会って何か変わ
るのか?俺は会いたくない。わかってく
れよ」
立ち聞きしていたことを気づかれないよ
う、電話を切るまで扉の向こうで息を潜
めていた。
思い出される優しく話す雅樹の声。
そして、彼女を見つめる目。
切なそうに微笑む雅樹。
彼女は、私とは違う雅樹の別の大事な人
なのだ。