恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜
もう、まわりはクリスマス一色に染まり
始めた。
店内に流れるクリスマスソング。
私の勤める雑貨店内も、サンタやツリー
などを型どった品々が並ぶ。
仕事帰りに駅前通りを歩けば、ライトア
ップされた木々も幻想的に光り輝いてい
る。
本当なら今頃は、目の前の奈々のように
胸を躍らせプレゼントを選んだり、クリ
スマスをどう過ごすか思案していたのだ
ろう。
「拓海に何かプレゼントしたいのに、い
らないっていうのよ。その代わり、どち
らか休みとってほしいって言うけど…初
めてのクリスマスだしプレゼントしたい
じゃない」
「いらないって言ってるならご飯でも手
作りして、2人で過ごせばいいんじゃな
い」
「もう、早希、冷たい」
冷たい⁈
そうかも……自分で別れを選んだ癖に、
目の前の奈々が幸せそうで嫉妬している
のだ。
「そんな顔するなら、飯島さんに連絡す
ればいいじゃない」
「そんな顔ってなによ。もう、吹っ切れ
てるんだから変なこと言わないでよ」
時間が解決すると思っていたのに、少し
も吹っ切れていない。
後悔⁈
違う…ただ、別れを告げても雅樹は追い
かけてくれなかった。
それが答えだと思い知らされ、悲しいだ
け…短い間だったけど、過ごした2人の
楽しかった時間が色褪せてしまう。
数ヶ月前
会うことも拒んで別れを告げるまで何日
も悩んだ。
意を決して、連絡すれば雅樹から大事な
話があると言われ覚悟を決めた。
雅樹の前でみっともなく泣きたくない。
2人だけで会うときっと私を平静でいら
れないから、いつもの場所コンフォルト
で会う約束をした。
いつものようにカウンターの席
「なぜ、あの日連絡くれなかったんだ」
私の手を取りとり雅樹が見つめる。
「メールでも言ったでしょう。素敵な人
にあったの。時間も忘れて一緒にいたわ
」
早希の手を強く雅樹が握る。
ツゥ…
「なに、拗ねてるんだ。昼間に会えなか
ったのが理由なら、今度、早希に休み合
わせるから機嫌直せよ」
繋いだ手はそのままで、もう片方の手で
早希の頭を撫でる雅樹。
「なぁ、早希…」
優しい声で名前を呼ばないで…
「今日が最後…もう、雅樹とは会わない
って決めたの」
心が揺らぐ。
「…うそだろう」
本当は別れたくないよ。