恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜
俺の8歳違いの妹、真愛実だ。
学生時代、コンフォルトでバイトしてた
のは話したよな…」
頷く早希。
雅樹は、淡々と話を続ける。
「その頃、祖父母が続いて亡くなったん
だ。その時、初めて真愛実に会った。
真愛実は、一人っ子だと思っていたのに
兄弟がいると知って喜んでいた……中学
生なると1人で俺のバイト先に顔を出す
ようになって会えばやはりかわいい妹で
…可愛がっていたんだ。母が訪ねてきて
久しぶり声をかけられた言葉が(関わらな
いでくれ)とひと言だけ」
そんな辛い過去があったなんて……雅樹
を思わず抱きしめていた。
「なんで早希が泣いてるんだ」
頬を伝う涙を指で拭ってくれる。
「だって…」
ひどい。雅樹が可哀想で…
「それから、真愛実を遠ざけてたんだが
母の愛を一身に受けて育った真愛実は
母を愛している。その母が、病気で余命
短いらしい。母にあってほしいと何度も
頼んできたんだ。その度に拒んできたが
真愛実と8年ぶりに会ってとことん話あ
った。母が俺に会いたがっていると知っ
て嬉しかったが、まだ心の奥にある憎し
みが消えることはなかった。だが、お前
と前に進むために1度会ってもいいと思
うようになったんだ。それであの日、真
愛実と病院へ行って来た。後、もって数
日だろうと医者に言われ、痩せ細って生
気のない母を見たら、今までのことがど
うでもよくなったんだ。俺の手をとって
(雅樹、ごめんね)って言われて最後に会
えて良かったと思った」
雅樹の目からも涙が流れる。
言葉の代わりに腕に力を入れ、ギュッと
雅樹をさらに抱きしめた。
「その3日後に…」
「…雅樹の辛い時に側にいてあげれなく
てごめんなさい」
「……いいんだ。早希が謝る必要ない。
早希ならわかってくれたのに、過去を知
られたくなくて、黙っていた俺が悪かっ
た。ちゃんと話をすればよかったんだ。
……早希、…こんな俺でも側にいてくれ
ないか⁈」
「ごめんなさい…」
「……ダメか?」
「ううん。違うの。雅樹が苦しんでいた
のに自分のことばかり考えていて、ごめ
んなさい。どんな雅樹も好き…ずっと会
えなくて辛かった。雅樹じゃなきゃダメ
みたい」
お互いのおでこをくっつけて微笑んだ。
「早希、好きだ…いや、愛してる」