恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜
「確か、3、4歳ぐらいの時に車にひか
れそうになって、母が入院していたよう
な気がする」
もしかしたら、俺をかばって事故にあっ
た。それで妹は生まれてこなかったのか⁈
だから……
「お兄ちゃんを捨てた訳じゃないのよ。
お母さんは、遠くからお兄ちゃんを見守
っていたの。小学生の頃から高校生の頃
までの写真を大事しまってあるの。たぶ
ん、おばあちゃんがお母さんに送ってい
たのね。何枚かお兄ちゃんのことを書い
てある手紙もしまってあったから……」
そんな馬鹿な…
俺は、捨てられたんじゃなかったのか⁈
「それじゃあ、お前が中学生になった頃
あの人は、(関わらないでくれ)と言いに
きたんだ。それは、どんな訳だ」
「お母さん、異常に過保護で、もしかし
たら私がお母さんの側を離れていくって
思ったんじゃないかな。あの時、毎日、
帰りが遅くて心配させていたから…」
「そうか、お前は中学生だったんだな。
それなのに俺は兄妹がいたことが嬉しく
て遅くまでつき合わせていたからか…
だが、今の話を聞いたからってわだかま
りが無くなる訳じゃないんだ。少し時間
がほしい」
「うん…でも、後どれだけ生きていられ
るかわからないの。だから、なるべく早
く会ってあげて…お母さん、お兄ちゃん
に会いたがっているから…」
「わかった…お前に会ってよかったよ」
「でも、どうして急に会う気になってく
れたの⁈」
「それは……」
その時、カウンターの中にいる大輔さん
目掛けて早希が店に入ってきた。
「早希ちゃん、いらっしゃい」
後ろにいる俺にも気づかず、支払いをし
ようと財布を取り出す早希。
俺は、大輔さんに目配せする。
すぐに、事を察してくれた大輔さん。
「あいつが来て先に支払われてたら、あ
いつの立場ないだろう。だから、早希ち
ゃんは気にしなくていいから…ね」
困っている早希。
(プッ)
俺は、小さく吹き出していた。
『ねぇ、あの人が言う雅樹ってお兄ちゃ
んのこと⁈」
『あぁ、彼氏の俺が後ろにいるのに気
づいていない。おもしろい女だろう』
『お兄ちゃんの彼女さん‼︎きれいな人ね
。ねぇ、声かけないの?』
『いや、おもしろそうだから気づくまで
見てる』
不思議そうに顔を歪める真愛実。
『お兄ちゃんって、性格悪いの⁈』
『どうだろう⁇早希、限定かもな⁈』
『ふーん、そんなに彼女さん好きなんだ
。もしかして、私と会う気になったのっ
て彼女の為⁈』
『あぁ、たぶんな』