恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜

大輔さんが止めなかったら、早希の艶っ

ぽい顔を見せびらかすことになっていた

だろう。


俺は、拓海と違って見せびらかせたいほ

うだが、さすがにこれ以上他の男の前で

この早希の表情は見せれないな‼︎


手を繋ぎ俺の物と誇示するあたり、独占

欲が出てきたのか⁈


俺も、拓海と変わらないんだな。


店内からかかる声。


「……頑張れよ」

言われなくても朝まで離さないけどね。

******************

2週間、悩んでやっと母と会う決心をし

た俺は、真愛実と日曜に母のいる病院へ

行くことにした。


早希を優先して母と会う事を後回しにし

たら、後悔するかもしれない。


早希、ごめんな。


今度、俺が早希に休みを合わせるから…

どんなワガママでもひとつ聞くから今回

は諦めて夕方から一緒にいよう。


胸のなかにしまって、早希に謝るが…


拗ねた早希も可愛い。


まったく、素直じゃない早希はナンパさ

れても知らないからと怒っている…


そこがいいんだが、念の為に釘刺してお

くか‼︎


「早希が来なかったら、俺ナンパされる

けどいいんだ」


……焦る早希。


「いやよ。絶対ダメ」


「なら、時間通りに来るんだな」


唇を噛み締め上目遣いで悔しがる早希。


あまのじゃくな彼女には、手を焼く。


そんな彼女に振り回されてる俺も素直に

なれずにいる。


今まで、女の扱いには長けてると思って

いたがなぜ、早希相手だとこうも調子が

狂うのか⁈


これが、人を好きになるってことなのか?


翌日の日曜日

真愛実と駅で待ち合わせ、電車に乗って

タクシーに乗り継ぎ1時間ほどかかる人

里離れた山にある病院で入院している母

に会いにやって来た。


約、8年ぶりに会う母は、痩せ衰え生気

がなかった。会ったからといって何か感

情が芽生えてきた訳てばないが、病気に

なると人間はこうも変わってしまうもの

かと言う思いしか出てこなかった。


体を起こすこともままならない母。


真愛実が、介助してなんとか体を起こす

ことができた。


俺は、ただ見ているだけしかできずにい

た。


母が手招きし、俺を呼ぶ。


一歩、二歩とベットの傍まで恐る恐る足

を運んぶと俺の手を取り涙を流す母。


その手に手を重ねるだけの俺。


「雅樹…ごめんね」


掠れた声で、声を振り絞る母が愛しいと

感じだ瞬間、頬を伝う涙。


俺、泣いてるのか⁈


言葉をかけることもできず、その場から

逃げ出した。


真愛実から事情は聞いていたが、今さら

許しを請う母を卑怯だと思う。


死が迫っている人間を罵ることもできず

行き場のない感情が声となる。


「あっー、クソっ」


それを見ていた担当医らしき人物が、母

の命は後、数日だと教えてくれた。


(最後に会えて良かったですね)


そうだ…きっと会わなかったら後悔して

いただろう。


病室に戻り、寝ている母に声をかける。


「俺を産んでくれてありがとう。おかげ

で、大事な存在の女と出会えた。紹介す

るからそれまで生きていてくれ…」


母が微笑んだ気がした。
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