恋は盲目 Ⅱ 〜心を見せて〜
真愛実の父親と交代して真愛実は俺と一
緒に帰って来たが、母が後数日の命だと
聞いた妹は、現実を受け入れられず涙を
流す。日に日に痩せ衰えて行く母を見て
きたからこそ辛いのだろう。
それでも目に涙を溜め、(お母さんに会っ
てくれてありがとう)と言う健気な妹が愛
しく思う。もっと早くに会っていれば、
妹の支えになれたかもしれないと後悔す
る。
今さら、何かできる訳でもない。
ただ、涙を流す真愛実を慰めるしかでき
なかった。
早希に事情を説明し、数日のうちに母に
会ってもらうつもりで、待ち合わせした
場所《コンフォルト》に来たが、いつま
で経っても早希が来なかった。
何度も、電話をかけているがつながらな
い。メールもしてみるが返信も返ってこ
ない。
次第に、苛立ってくる。
まさか、本当に他の男と一緒にいるので
はないかと心配になってくる。
だが、冷静に考えれば俺を愛する早希が
他の男に気が移る筈もなく、何かトラブ
ルにあったのかもしれないと考えが始め
た。
心配で、早希のマンションへ向かうが部
屋は暗いままで、帰って来ていないらし
い。
長い間外で待ってみるが、部屋の窓は暗
いままだ。お互いの部屋の鍵を交換して
おけば良かったと後悔する。
(早希、なにかあったのか⁈会いたい…心
配だから、何時でもいい連絡してくれ。)
最後にメールを打ち、もう一度部屋の窓
を見つめ、マンションを後にした。
翌日、仕事の合間に早希の仕事場による
と体調を崩し休みだと聞いた。
心配で連絡してみるが電話には出ない。
しばらくすると早希からメールが届いた。
(体調を崩し、しばらく会えない)
様子を見に行くと言う俺を拒む早希。
既にこの時、早希が別れを決意していた
とは知らず、ただ、拗ねているだけだと
思っていた。
3日後、早希を紹介することもできずに
母はあの世へ逝ってしまった。
俺は、1人で泣いた。
あの日、早希にちゃんと事情を説明して
おけば側に早希がいてくれただろう。
後悔で母の死を受け入れることができな
いまま早希から連絡が来た。
「なぜ、あの日連絡くれなかったんだ」
不安を拭おうと早希の手をとる。
「メールでも言ったでしょう。素敵な人
にあったの。時間も忘れて一緒にいたわ
」
早希の手を強く握る。
ツゥ…
早希の言葉が信じられない。
俺を見ようとしない早希の頭を撫でる。
「なぁ、早希…」
こっち向いてくれ…
「今日が最後…もう、雅樹とは会わない
」
真剣な目で顔を向けた早希。
「…うそだろう」