love letter~由香~
いま、目が合ったしっっ!
一気に上がる心拍数。
嬉しさのあまり顔が緩みそうになる。
『押して、押して、引く!』
呪文のように、恋愛の極意を心の中で繰り返しながら、ピクピクと引きつる顔の筋肉を抑えながら、あたしはその場を早足で立ち去った。
嬉しいけど、きついなぁ。
あたし、いったいどんな顔していたんだろう。
見るに耐えられないほど、無愛想な顔していたんだろうなぁ。
好きな人の前では常に笑顔でいたいのに。
けど、これも、笠原くんと話すための下準備。
そう思えば、なんとか乗り切れそうだな。
「……おい!」
―――!?
立ち去るあたしを呼び止めるようにして、笠原くんの声が聞こえてくる。