近距離ロマンス
友達以上に恋人未満
前方に、女子の注目を浴びながら歩いていくやつがいる。
背の低いあたしだけど、やつは背が高いからわかりやすい。
あたしはさっきから、やつとの間を15メートル保ちながら後ろを歩いている。
やつはあたしに気づいていないようす。
なにか音楽を聴きながら、携帯を触りながら、やつの足並みは軽快。
あたしは付かず離れずの15メートルを意識しながら、小走りで進んだ。
ちょうどここは校門で、”律富学園“と大きく彫られてある。
あたしたちの通っている学校だ。
そこから下駄箱までの間、軽快な足並みでやつに抜かれた女子の空気がピンクに染まる。
やつに見とれて、みんながほほを染める。
やつは、馬鹿みたいにもてる。
何度かモデルの誘いもきているもんだから、かっこいいのはお墨付き。
やつのSっけの性格も阿呆みたいにもてる。
あたしはやつにからかわれまくりだ。でもあたしは決してMじゃない。
…そんなやつの名前は、松本千里(まつもとせんり)。
あたしの友達ながら、どうしてこんなにもてるんだろう。
友達として、あたしからしてみれば、松本がもてるのは、なんか複雑。
顔がいいのは知ってる。でも性格のSがなぜもてるってのは、不明。