近距離ロマンス
ご褒美
「昂汰は勉強しないの?」
前の席に座った二人が、やけに余裕そうに見える。
あたしは頭を抱えていた。
勉強しているけどしていない。
机にノートは広げているけど、内容は頭の中に入ってこない。
目の二人の言葉が耳の中に入ってきた。
「世の中には、赤点をとってしまいそうな人もいる。そう思うと俺ってまだまだ大丈夫、って思えてくる」
「あたしもーっ。きのうばっちり勉強したしぃ」
「由宇もか。普通だよな」
聞こえてくる会話を無視して、あたしは必死に勉強しようと答えを考える。
でも集中力の切れたあたしには、その会話がすべてを無にさせる。
「ほら、目の前の人なんかさ、今さら必死になってんだ。後悔後先たたずだよな」