【完】復讐の元姫
何をするわけでもなく、彼の手を握っていたとき。
「……、っ」
「麗……?」
麗が突然、苦しげに顔をしかめた。
何かをつぶやこうとした彼の口元に耳を近づけると。
「汐、乃」
「っ」
彼は起きてるわけじゃない。
彼が苦しそうになってから掻き始めた汗を拭いてあげる。
……うなされてる?
「汐乃……っ」
普通にしていても、はっきりと聞き取れるくらいの音量で。
彼がひときわ苦しそうにそう呟いたかと思うと、ゆっくり彼が目を開けた。
「汐、乃?」
「麗、大丈夫……?
うなされてたから、」
心配してたんだけど、という言葉は。