【完】復讐の元姫
「んじゃあ、交渉成立な」
時雨が身を乗り出して、私の額に軽く唇で触れた。
「その話だけのために、サボったの?」
くすり、と。
笑って問えば、時雨は「ん?」と少し考えて。
「いや。シオとデートするつもりだった」
「じゃあ、どっか行く?」
「戻らなくていいのか?」
「交渉した相手のことぐらい、ちゃんと知っておくべきでしょう?」
そうだな、と時雨が笑う。
「じゃあ、たまには息抜きしましょうか」
カップを口に運ぶ私の手は、もう震えてはいなくて。
「復讐の方法も、考えないといけないしね~」
時雨の言葉に笑う自分は。
「……そう、ね」
──もう、自分じゃないような気がした。