【完】復讐の元姫



「私には以前、好きだった子がいます」



「え、」



「でも、その子とは結ばれない」



そう思ったから、執事になったんです。



そう言った彼に、何も言えないまま。



「だけど、あなたに出会って。

あなたが一途に彼を想い続けているのを見て、ちょっと羨ましいと思いましたけど」



「ハル、ト」



「いつの間にかあなたを泣かせる彼が、許せなくなっていた。

自分なら幸せに出来るのに、と何度も思いました」




もし、彼が。



「そこに偶然、婚約の話が舞い込んできて。

私は迷うことなく引き受けました」



その子を、今でも好きだとしたら。



その子との恋が、叶っていたら。



「お嬢様。私と婚約していただけませんか」



──私は麗と、幸せになれたかもしれない。



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