【完】復讐の元姫
「報告?」
「そ、報告~」
彼等の訝しげな視線もものともせず、時雨は私の肩を抱き寄せた。
「俺、シオと付き合うことになった」
快晴の屋上の下。
そう告げた時雨に、空気は一気に暗くなる。妙に奈々の空気だけが明るいのは、気のせいなんかじゃないだろう。
「何言ってんの、時雨」
「いや~、俺もびっくりしたわ~。
いつもの調子でシオに告ったら、「付き合ってもいい」って言ってくれんだもんな~」
2年も粘った甲斐あるわ~、と時雨は嬉しそうに笑う。
演技なのにリアリティを感じるのはなんでなんだろう。
「汐乃」
ふいに。
麗に名前を呼ばれて、私は視線を麗に向ける。
彼は今でも、私を「汐乃」と呼んでるのか。
自分を裏切った女だって、思ってるくせに。
ただそれを嬉しいと感じる自分が、一番嫌いだ。