【完】復讐の元姫
「本当か?」
あまりにも真剣に訊いてくるから。
一瞬口ごもりかける。
彼が私のことなんてどうでもいいと思ってることぐらい知ってるのに、期待したように浮く自分の心がどうしようもないほどに嫌で。
「当たり前だろ~?」
時雨がそう言いながら、みんなに見えないように背中をポンポンと優しく叩いてくれたから。
落ちついた私は、時雨のウエストに腕を回して、軽く抱きついてみせた。
前は、麗に抱きつくことも少なくなかった。
だからこそ、人前で抱きつくことにあまり抵抗がない。
「もちろん。
時雨の一途なところ、好きなんだもの」
ふふ、と。
微笑めば、麗は「そうか」とだけ呟いた。
正直、この嘘にはあまり意味がない。
あくまで、復讐の始まりを告げるためと。
「んじゃあ、そういうことだからよろしく~」
彼等に、接触しやすくするためだ。