【完】復讐の元姫
:赤い糸の繋がる相手
【sideハルト】
「じゃあ、行ってくるね」
嬉しそうに。
でもどこか泣きそうにそう言って。
5年ぶりに愛しい人の元へと向かったお嬢様を見送った後。
「……はぁ」
思わず、ため息。
本当はこんなつもりじゃなかったはずだ。たぶん。
もし、お嬢様がすんなり婚約を認めていたとしたら。
今頃、彼女は俺の妻で。
生涯、一緒にいてくれる人だったかもしれないのに。
……そう思いながら。
俺は、あの日のことを思い出していた。
これは、5年前。
お嬢様が彼等に内緒で海外へと出発される数日前。
彼が1週間入院することになったとき、俺もお見舞いに行った時のこと。