【完】復讐の元姫
「そんな理由だったの?」
「“そんな”じゃねーよ」
そう言って彼は、拗ねる。
拗ねてるの、ちょっと可愛いんだけどね。
「もう、拗ねないで」
雅を片腕で抱っこしたまま、麗の頭に手を伸ばす。
ふわふわと頭を撫でてあげれば、彼は案外簡単に機嫌をなおしてくれた。
「汐乃」
「うん?」
「たとえ雅でも、お前のこと取られたくねーんだよ」
よく考えたら、彼は昔からそうだった。
私がクラスの男の子と話したりしていたら、結構頻繁に妬いていたし。
「麗のこと好きだから安心して」って言ったら、毎回すぐに機嫌をなおしていた。
「……うん。じゃあ、麗が出来る分は麗にお任せする」
私の言葉に、麗は「ん」と返事をしてくれる。
私が好きな彼の溺愛先は。
「カレー食べましょうよ、麗」
「カレーじゃなくて汐乃がいい」
「!?」
「冗談だ」
……いつまで経っても、私だけらしいです。
【好きな相手の溺愛先 END】