【完】復讐の元姫
:Honey*Valentine
これは、汐乃がまだ姫だったころ。
裏切り者だと突き放される、約数か月前のこと。
「ねぇ、汐乃ちゃん」
バレンタイン一週間前、2月7日。
土曜日で、麗の家に来ていた私は、おばさん──麗のお母さんに、声をかけられた。
今日は、麗に言われてお泊まり。
その麗はといえば、いまはお風呂だ。
「来週、バレンタインね。
汐乃ちゃんは、なにか考えてるの?」
優しくほほ笑んで、聞いてくれる彼女に、小さくうなずく。
「麗は、甘いもの苦手だから……。
甘さ控えめの、ガトーショコラでも作ろうかなって思ってます」
「ふふ、麗のために色々考えてくれてありがとう。
汐乃ちゃんが麗のそばにいてくれて、本当に嬉しいわ」
彼女は、そう言ってくれるけど。
お礼を言うのは、私の方だ。
麗に、これでもかってほどに大切にしてもらえてるんだから。