【完】復讐の元姫



去年のホワイトデーには、笑ってたのに。



彼女は俺の隣で、「ありがとう」って。



「ずっと一緒にいようね」ってほほ笑んだ彼女を抱きしめた俺は、間違いなく笑っていたはずなのに。



「ああ。まぁ、既製品だけどな」



「でも、嬉しいよっ。ありがとう」



抱きついてくる奈々。



はぁ、と思わずちいさくため息をついたとき。



「そこ、退いてもらってもいいですか」



俺が知ってる中で、一番冷たい声。




邪魔だというように、汐乃が冷めた目で俺らを見ていた。



ずき、と。



自分の胸が痛む。



こんな顔させたのは、傷つけたのは、紛れもなく俺なのに。



笑ってくれ、なんて。



「あっ、ごめんね? 行こ?麗」



残酷、なんてレベルじゃないだろ。



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