【完】復讐の元姫
「……そうだな」
ごめんな。
何度届かないその言葉を、汐乃に向かって呟いたか。
これが運命なら、切り裂かれてしまえばよかった。何もかも。
昔から、自覚はあった。
容姿も頭脳も運動神経も。
ほかのヤツよりか秀でてることには気づいていたし、何より龍錬花の総長というブランドまでつけば、女が群れる。
ほしいものは、いくらでも手に入れられた。
──彼女だけが、手には届かない。
俺が彼女を求めれば求めるだけ、汐乃が傷つく。
そして手放せば手放すほど、汐乃が悲しむ。
どちらも汐乃を苦しめる原因だと、傷つける原因だと、わかっていながら。
どうせ手を伸ばせもしないのに、消え去った彼女の温もりだけを求め続けた。
だから、奈々と付き合ってたのに何もしなかった。
汐乃だけを自分の中に刻み込んでおきたかったから。