【完】復讐の元姫
都合がいいと言えば、そうかもしれない。
落胆するのは、翌年も同じこと。
ただ。
「汐乃ちゃん、これあげる」
ホワイトデー、ほかの男たちが汐乃に群がってチョコレートを渡していた。
でも、彼女はひとつも受け取ることなく。
「お返しも何も、渡してないから……。
ごめんなさい、受け取れない」
丁寧に断っていて、そんな彼女に安堵するだけだった。
時雨が、「なんでも、渡したいヤツはひとりだけなんだってよ~」とそのあと意味深に笑いながら言ってて。
それに一瞬期待したけど、ありえねぇなとその考えを打ち消した。
そして、3年目。
ようやく、戻ってきたのに。
「……もどって来るわけねぇか」
彼女は俺を、俺らを、手放してどこかへと行ってしまった。
どうすることもなく、ただ南が勢力を上げているというニュースだけを頭に入れていた。
──でも、汐乃の名前どころか、婚約の話すらニュースに出てくることはなかった。