【完】復讐の元姫
「……うん、知ってる」
「汐乃以外の女なんていらねぇよ」
ぎゅうっと、強く彼女を抱きしめる。
「麗……」
その腕がさっきの言葉で動揺して若干震えていたこと、いつもより強く抱きしめていたこと、果たして彼女は気づいていただろうか。
* * *
「あら」
ドアの、向こう。
彼女は突然の訪問に驚いた顔をして、でもすぐにぱぁっと笑顔を輝かせた。
「汐乃ちゃんっ!いらっしゃい!」
「おひさしぶりです、おばさん」
──ホワイトデー。
汐乃がバレンタインのお返しとして、連れて行って欲しいと頼んできたのは俺の実家だった。
いつでも行けんのに。