【完】復讐の元姫
小さくため息をつくと、めざとくキッチンの方から「どうしたの?」と声をかけられる。
「いや、」
「〝千夜(ちよ)ちゃん〟の、こと?」
具体的な名前を出してきた母親に、あからさまに眉間を寄せてしまう。
それが〝肯定〟なのか、〝否定〟なのか。
「何かあったら、聞いてあげるわよ。
私は、千夜ちゃんのこと好きだもの」
──わからない、はずがない。
「………」
仮にも俺の母親は世界に名の知れた大財閥のお嬢様で。
だから、相手の表情を読み取るのが上手い。
俺の周りで言えば、表情の変化がわかりにくい親父の表情も簡単に読み取ってしまう。
まぁそれは、ずっと一緒にいるっつうのも関係してるんだろうけど。
「千夜は、」