【完】復讐の元姫
◆
「……ただいま」
──午後6時半。
先に帰宅した雅に、千夜ちゃんが「おかえりーっ」と笑みを向ける。それから、お決まりのあのセリフ。
「トリックオアトリート!」
雅は一瞬不思議そうな顔をした後、すぐにハロウィンだと理解したのか、ぽんぽんと千夜ちゃんの頭を撫でた。
「残念ながらお菓子は持ってねぇから、お菓子より甘いものでもいいか?」
「へ……? みや、ん……っ」
……あら。
ラブラブね、と思ってみていれば、千夜ちゃんが顔を真っ赤にして、雅を睨む。
「っ、雅のばか……」
「イタズラしたかったのか?」
「もういいもんっ。汐乃さんっ、晩ご飯の残りのお手伝いします!」
「ふふ。雅、着替えてらっしゃい」
千夜ちゃんは、雅がお菓子を持ってるわけない、と過信していたんだろう。
そして、事実、雅は持っていなかった。
だから、イタズラとして、彼女は雅にしたいことがあったんだろうけど……こればかりは、雅の方が上手だったから仕方ないわね。