【完】復讐の元姫
残念そうな、千夜ちゃん。
張り切ってハロウィンの飾り付けをしていたから、ショックなんだろう。
晩ご飯を食べたあと、夕方に作っておいたアップルパイと紅茶で、軽く休憩して寝室に向かった千夜ちゃんと雅。
特にする用事もないから、麗が帰ってくるまで待ちましょうか、と紅茶を淹れる。
「ただいま」
過去の映画を、毎週放送している時間。
何気なくそれを見終え、日が変わった頃に、麗が帰ってきた。
おかえり、と告げただけなのに、姿を見ただけでどうしてかたまらなくさみしくなってしまって、思わずうつむく。
千夜ちゃんと雅の仲良さげな姿を見たからかもしれない。
「汐乃?」
「……麗、あのね」
ネクタイをゆるめる何気ない動作さえ、この人がやるだけで格段に色っぽい。
その動作に魅せられていたら、唇に一瞬だけ触れる淡い熱。
突然のことに驚きながら彼を見つめると、麗はくすりと笑ってから、私の頭に手を乗せた。
「さみしかったって、顔に出てた」
「っ、」